アトリエとプロの現場で使う凸版印刷用ピンローラー

凸版印刷用ピンローラーは、ボールベアリングで回るゴム表面のローラー軸の両端にハンドルが付いたブレイヤーの一種です。麺棒のように両手で扱え、ゴム表面は用途に応じて硬めのものと柔らかめのものがあります。ただ一般には、美術印刷で大きめの版にインクをのせるとき、均一な圧力配分を得るのに最適な道具です。

版画用ピンローラーを使うことは、木製やガラス製のバレンを使う方法や、プロ向けのブロックプリント用プレスを使う方法に代わる、凸版印刷の実用的な選択肢です。リノカット、木版画、リトグラフ、モノタイプ、その他の凹版・平版技法での制作にも使えます。

では、凸版印刷・リノカット用のピンローラーには、どんな条件を求めればよいのでしょうか。デザインや使い勝手から、ゴムの硬さとショア硬度の考え方まで、この特別なブレイヤーについてこれからご紹介します。あわせて、Ritualis Press から登場した最新のリノローラーと、アーティストやプロのアトリエでの使い方のおすすめもお伝えします。


Ritualis Press ピンローラーのハンドルのディテール

 

リノカット用ピンローラーのデザインと素材

質の高いリノカット用ピンローラーは、職人が手作りして磨き上げた木材、金属製のボールベアリング機構、そしてNBRゴムで作られていることが多くあります。NBRゴムは、しなやかさ、なめらかな表面、そして耐久性から版画に最適な合成ゴムです。油、薬品、ひび割れ、日々の摩耗に強く、お手入れが簡単で長く使えます。つまり、洗うのが手早く済むうえに、インクのなじみがよく、なめらかで均一な転写を長期にわたって保てるということです。

一方、NBRゴムには硬めのものと柔らかめのものがあり、柔らかいゴムのほうがすばやく正しくインクをのせやすいという点では、メーカーも作家もおおむね一致しています。そのため、リノカットやブロックプリントをはじめたばかりの方には向いていることが多いのです。

たとえばリノカットの場合、柔らかいゴムはバトルシップグレーのリノリウムにもきれいになじみます。ただし柔らかいゴムには、細かなディテールを潰してしまうことがあるという弱点もあります。反対に、硬めのゴムは深く彫った細い線をとらえるのに役立ちます。とはいえ硬いゴムでは、版に均一にインクをのせるのに手間と時間がかかることもあります。

 

作業机の上の Ritualis Press ピンローラー

 

硬さと柔らかさのちょうどよいところを見つける

ゴムの硬さは「ショア硬度」と呼ばれる指標で表せます。ショア硬度は、素材のへこみにくさを0から100の数値で示すものです。つまり数値が高いほど硬い素材、低いほど柔らかい素材ということになります。そして結局のところ、ブロックプリントに最適なショア硬度は、作り手の好み、作風、経験によって変わります。

たとえば深く彫った細い線を際立たせたいなら、高めのショア硬度が役に立つでしょう。細部を潰す心配なく、すっきりした線で緻密に刷りたいなら、低めのショア硬度で十分です。

そのため多くの作家にとっては、その中間のどこかに、ローラーでの手刷りに広く対応できるちょうどよい点があります。より複雑な刷り、たとえば色をにじませて重ねるようなときには、ローラーをほかの凸版印刷用ブレイヤー美術版画用のブロックプリント用品と併用するのも一般的です。

 

Ritualis Press のリノカット用ピンローラー

使い勝手という点で、Ritualis Press から登場したもっとも優れた新しい道具のひとつが、両手で扱えるリノカット用ピンローラーです。ゴム部分の長さは400 mmで、A5からA3、さらに大きなサイズまで、中判から大判の刷りに最適です。

同時に、NBRゴムが耐久性と汎用性を兼ね備え、版にインクをのせるときの圧力を均一に配分します。アトリエやプロの現場でのリノカット印刷はもちろん、木版画やブロックプリントの幅広い技法にも対応します。はじめての方にも、プロの版画家にも扱いやすい一本です。

さらに Ritualis Press のリノローラーは、地元チェコの木工職人が丁寧に手作りし、磨き上げています。そして木製バレンと同じく、硬いオーク材のハンドルが自然で心地よい握りをもたらします。精密ボールベアリングを備えた無垢の芯と金属フレームが、刷るあいだの安定となめらかな動きを支えます。

それぞれのローラーには2つの木製スタンドが付属し、どんなアトリエにもよく似合い、使わないときはローラーをしっかり支えてくれます。


Ritualis Press リノカット用ピンローラー メインビュー

 

リノカット用ピンローラーにはどんなインクが合うのか

Ritualis Press のリノローラーには油性インクを使うのが最良です。水性インクよりも粘度が高いためです。おかげで油性インクはゴムローラーによくなじみ、版へもより簡単に、すばやく移ります。柔らかいゴムローラーや硬いゴムローラーだけを使う場合よりも、深みのある鮮やかな色を得やすくなります。

リノカット用ピンローラーを使ったあとのお手入れは、版にインクをのせるのと同じくらい簡単です。乾いた布でローラーを拭き、テレピンやミネラルスピリットなどの溶剤を使うだけ。インクの量が少なかったときは、洗う前に紙の上を軽く転がすだけで余分なインクのほとんどが落ちるので、さらに手早く済みます。


Ritualis Press ピンローラーのディテールビュー

 

ブロックプリントに欠かせないそのほかの用品

凸版・リノカット用のプレスのほかにも、Ritualis Press ではさまざまな美術版画用のブロックプリント用品を取り揃えています。リノカット用ピンローラーと同じく、これらもアーティストがアーティストのために設計したものだとひと目で分かります。職人が手作りする木製バレンや手吹きガラスのバレン、インクローラー、インク、カッティングマット、フェルトなど。ブロックプリント用品がひととおり揃う、作家のためのお店です。

ほかの作家が Ritualis Press で何を作っているか、のぞいてみませんか。熱心な版画家たちの動画はRitualis Press のInstagramコミュニティでご覧いただけます。新しい作家に出会い、インスピレーションを得て、版画という儀式をともに楽しみましょう。

 

文:ジャスティン

コメントを残す

このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

次に読む

すべて見る

Linocut Ink Guide: How to Choose the Right Lino Printing Ink

リノカットインクガイド:最適なリノ印刷インクの選び方

リノカット印刷は、ほかのどの材料よりもインクに左右されます。選んだリノカット用インクの種類が、刷りのシャープさ、色の深み、乾くまでに作業できる時間、そして作業のあとの後片づけのしやすさを決めます。インクの種類、ブランド、配合は数えきれないほどあり、どれを選ぶべきかは必ずしも明らかではありません。とくに、はじめたばかりの方や、これまでとは違う刷り方に移ろうとしている方にとってはなおさらです。 このガイドでは、リノ印刷用インクの主な種類をすべて取り上げ、油性と水性を詳しく比べ、インクを選ぶうえで本当に大切な性質を説明し、アトリエでの使い方とうまくいかないときの対処を実践的にご紹介します。 適したリノカット用インクを選ぶことがなぜ大切か リノカット印刷は、刷り上がりの質で生きも死にもします。そしてインクは、その方程式のなかでもっとも大きな変数です。完璧に彫った版を用意し、質の高いリノリウム板を使い、きちんと調整したプレスで刷っても、インクが合っていなければ、濁ってまだらでひび割れた刷りになってしまいます。硬すぎるリノカット用インクは均一に練り広げられませんし、やわらかすぎるインクは細部を埋め、紙の繊維へにじみます。相性の悪い配合は、いつまでも乾かないか、あるいは大きな版を覆いきる前にローラーの上で膜を張るほど早く乾いてしまいます。 このガイドでは、リノカット用インクを選ぶときに知っておきたいことをすべて扱います。主な種類、鍵になる性質、刷り方ごとの比較、そしてはじめての方、中級の方、プロのエディション制作それぞれに向いたインクをご紹介します。 リノカット用インクの主な種類 リノカットは凸版印刷の技法です。彫った版の盛り上がった面にインクをのせ、紙や布へ移します。凸版印刷用インクは、シルクスクリーン用、デジタル用、凹版用のインクとは異なる配合になっていますが、その境界は多くの初心者が思うほど厳密ではありません。リノ印刷用インクを探すときに出会う主な分類をご紹介します。 油性の凸版印刷用インク 油性のリノカット用インクは伝統的な選択であり、いまもプロの版画の基準であり続けています。亜麻仁油などの乾性油を媒体として配合されており、そこからいくつかの重要な性質が生まれます。 長いオープンタイム — 油性インクは蒸発ではなく酸化によって乾くため、何時間も扱える状態を保ちます。大きなエディションや大判の版を刷るとき、インクが膜を張ることなく何度もローラーに補充する時間が必要な場面では、これは大きな利点です。 高い顔料の含有量 — 油性の凸版用インクはたいてい顔料を高い濃度で含み、深く不透明な色と優れた覆いを生みます。 輪郭のシャープさ — 油性インクの粘度と表面張力が、インクを版の盛り上がった面にきれいにとどまらせ、彫った溝へ流れ込むのを防ぎます。おかげで細い線がくっきりと保たれます。 重ね刷りと減り彫りに最適 — 油性インクはゆっくり乾くため、色を重ねるあいだに十分な乾燥時間(ふつう24〜48時間)が必要です。ただし一度乾けば次の層で再溶解することがなく、重ね刷りの結果が読みやすくなります。 引き換えになるのは後片づけです。油性インクにはミネラルスピリット、植物油、または専用のインククリーナーが必要で、水では洗い流せません。そのため、教室や、溶剤を保管できない住まい、あるいは作業のあと手早く片づけたい版画家には向きません。 よく知られた油性の凸版印刷用インクには、Cranfield Caligo Safe Wash(植物油を基剤としながら、油性でありながら水で洗い流せます。下のハイブリッドの項をご覧ください)、Gamblin Oil、Charbonnel の凸版用インクなどがあります。 水性のリノカット用インク 水性のリノカット用インクは、酸化ではなく水分の蒸発によって乾きます。そのため、油性インクとは根本的に異なるふるまいを見せます。 乾きが早い — 水は速やかに蒸発するため、暖かい環境なら数分から1時間ほどで次の色を重ねられます。同じ作業のうちに重ね刷りをしたい多色印刷では魅力的です。 後片づけが簡単 — 刷毛、ローラー、プレスの面が、水と石けんできれいに洗えます。溶剤は要りません。 オープンタイムが短い — 重ね刷りを速くしてくれるその早さが、大きな版を刷るときには足を引っぱります。水性インクは版を往復するあいだにローラーや版の面で乾いてしまい、インクのむらにつながります。 やわらかな刷り味...

もっと読む

Textile Printing with Linocut: A Complete Guide to Block Printing on Fabric

リノカットでのテキスタイルプリント:布へのブロックプリント完全ガイド

リノリウム版で布に刷るための完全ガイド。生地選び、インク、デザイン、手順、熱定着、お手入れまで。Ritualis Press A2テキスタイル用リノプレスとともにご紹介します。

もっと読む

How to Lino Print for Beginners: A Complete Step-by-Step Guide

はじめてのリノカット印刷:ステップごとの完全ガイド

道具選び、下絵の転写から、彫り、インクのせ、そして最初の一枚を刷るまで。はじめての方に向けたリノカット印刷のステップごとの完全ガイドです。動画、うまくいかないときのヒント、よくある質問も収録。

もっと読む